検査データを考える
抗リン脂質抗体症候群
鏑木 淳一
1
1東京電力病院内科
pp.1219-1222
発行日 1999年9月1日
Published Date 1999/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903978
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はじめに
血清中の抗核抗体の測定は,膠原病各疾患の診断・病型分類・治療方法の選択・予後の推定に有用である1).例えば,抗二本鎖DNA抗体は,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)の疾患標識抗体であり,また抗Sm抗体は腎症を伴うSLEに検出される.一方,リン脂質に対する抗体は従来,血清梅毒反応生物学的偽陽性(biologically false positive serologic tests for syphilis;BFP-STS),ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulants;LA)により測定されてきたが,その対応抗原の詳細な性状・臨床的意義は不明であった.
しかし,1980年代からカルジオリピン・ホスファチジルセリンなど陰性荷電を有するリン脂質に対する抗体が,酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)で特異的に測定されることが可能となった.これにより,主にSLEを対象とした履歴研究から,本抗体陽性例の臨床像が集積され,“抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome;APS)”という疾患概念が確立された2〜4).さらに1990年以降,抗リン脂質抗体が反応する抗原は多様であることが明らかにされてきた.
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