今月の臨床 婦人科における検査法—有用性と再評価
不妊
7.習慣性流産夫婦のHLA-typingは必要か
萩原 政夫
1
,
辻 公美
1
1東海大学医学部移植免疫学
pp.930-931
発行日 1997年9月10日
Published Date 1997/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903023
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HLA抗原は,すべての免疫学的反応において,自己,非自己の識別に働くヒト主要組織適合抗原である.妊娠現象は母体にとってみればsemi-al—lograft,すなわち,自己と同一のHLAハプロタイプを1/2共有する妊卵,胎児や胎盤が生着するという現象であり,血液そのものの交流がない点は移植とは異なるものの,免疫学的な機序がその成否に多分にかかわっていると考えられる.その最大の証拠としては,抗HLAアロ抗体が,妊婦血清から検出され,HLA抗原の血清学レベルでの判定に役だっていることが挙げられる.
HLAには,約200種類近くの血清学レベルのタイプおよび最近ではDNAタイピング法によって,さらに多数のサブタイプに分けられる.1981年Taylor1)は,原因不明の習慣性流産夫婦間で,HLA適合性が高いことを報告したが,それ以来今日まで,HLAと妊娠現象,とくに原発性不妊症,習慣流産に関しては,さまざま議論が行われてきた.いわゆる夫婦のHLA-sharing(共有性)が妊娠の成立や維持に対して影響するとの報告1-3)は,初期の頃において主流であったが,最近ではむしろ関与がないとの報告4-6)があいついできている.
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