今月の臨床 着床
着床はどこまでわかったか
1.胚からみた着床
舘 鄰
1
1東京大学大学院農学生命科学研究科
pp.18-21
発行日 1997年1月10日
Published Date 1997/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902796
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着床過程の分類
着床の過程は,胚盤胞の子宮上皮への接着からはじまって,最終的に形成される胎盤の原基が形成されるところまでと定義されている.形態学的に見た着床の様式は,古くから,中心着床(cen—tral implantation),偏心着床(eccentric im—plantation),表面着床(superficial implanta—tion),壁内着床(interstitial implantation)などに分類されることが多いが,あまり本質的ではなく,最終的に形成される胎盤の型の分類をそのまま用いるほうが適当な場合が多い.すなわち,①上皮漿膜(絨毛膜)胎盤型,②結合組織漿膜胎盤型,③内皮漿膜胎盤型,④迷路性血液漿膜胎盤型,⑤絨毛性血液漿膜胎盤型である1).このなかで①,②は低浸潤性,③〜⑤は高浸潤性と呼ぶことができよう.
高浸潤性胎盤型の着床では,着床胚のトロホブラスト細胞は子宮上皮に接着した後,上皮細胞層を除去し,基底膜をよぎって間質層へと浸潤していく.その後,内皮漿膜胎盤型の着床では,トロホブラスト細胞は血管内皮を浸潤することはないが,迷路性血液漿膜胎盤型(齧歯類),および絨毛性血液漿膜胎盤型(霊長類)の着床過程では,トロホブラスト細胞は血管内皮を浸潤して母体の血液に直接接するようになる。
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