今月の臨床 婦人科癌の免疫療法
免疫療法の展望
14.ミサイル療法
山口 俊晴
1
,
高橋 俊雄
1
1京都府立医科大学第一外科
pp.864-867
発行日 1995年7月10日
Published Date 1995/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902182
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はじめに—ミサイル療法とは
癌細胞だけに選択的に毒性を発揮する薬剤があれば,癌の治療はきわめて簡単なものになるにちがいない.しかし,現実にわれわれが使用している抗癌剤のほとんどは,造血器や消化管粘膜を始めとした正常組織にも強い毒性を発揮する.感染症に対して使用される抗生物質は,細菌に対して選択的に毒性を発揮するために,全身投与によって容易に治療が可能であるが,抗癌剤などは少しでもさじ加減を誤るととんでもない結果を招くことになる.
そこで,最近は薬剤を希望する場所に選択的に到達させようとする試みが盛んになってきている.このような試みは,DDS(Drug DeliverySystem:薬物送達系)と称されて学会もすでに発足し,広い分野の研究者が参加している.DDS開発の目的は大きく,薬剤の徐放性(放出のコントロール)と,目的とする部位への薬剤ターゲッティングに分けられる.このDDSは臓器レベル,組織レベル,細胞レベル,そして最近は分子レベルで検討されている.選択的に薬剤を到達させるという意味では,選択的動注化学療法が臓器レベルのDDSとして,すでに広く臨床応用されている.また,癌組織の特性に着目し,SMANCSなどの抗癌剤をリピオドールに懸濁して投与するのは,組織レベルのDDSである.そして,これから紹介する抗体を抗癌剤のキャリアとする,ミサイル癌化学療法は細胞レベルから分子レベルのDDSといえる.
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