今月の臨床 胎盤—母児接点としての役割
物質のトランスポート
6.ガス交換
鈴木 伸明
1
,
岡村 州博
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.970-971
発行日 1994年8月10日
Published Date 1994/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901837
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概念
胎児の成長するためのエネルギーはすべて母体から供給され,その中で母児間のガス交換は胎盤を接点として行われる.母体からの血液は,子宮動脈かららせん動脈を経て絨毛間腔に入り,噴水状に絨毛を還流しながら子宮静脈に戻る.臍帯動脈からの胎児血は絨毛で酸索化されて臍帯静脈に移行し胎児に入る.胎児では全循環血漿量の1/2強が胎盤循環に供給される.この母体—胎児間のガス交換はFickの法則に従った単純拡散によって行われる.
また,ガス交換は交換系の血液性状にも依存している.母体血と胎児血ではヘモグロビンの性状が異なり,HbFはHbAより解離曲線が左方に移動しているため,同一飽和度を得るための酸素分圧に差があり,胎児血の方がはるかに低く,多くの酸素が胎児血側に移行される.その結果,胎児の血液酸素分圧は27〜29mmHgと,母体の約1/3の値で極端に低いが,酸素親和性の強いHbFにより飽和度は高く,胎児に特有な短絡路を通して各臓器へ供給される.
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