Japanese
English
綜説
胎盤におけるガス交換について
On the Gas Exchange in Placenta
山下 徹
1
,
酒井 忠
1
Tôru Yamashita
1
1東北大学医学部産婦人科教室
pp.469-471
発行日 1959年6月10日
Published Date 1959/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201968
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Ⅰ.緒言
子宮内胎児はその必要とする酸素を羊水を通して得るとか,皮膚呼吸によつて得るとかが考えられた時代があつたが,18世紀に入つて,Monro,Haller等が胎児は胎盤を通して栄養物質を母体より得ると考えてから,胎盤は胎児の呼吸器官であろうと想像されるに至つた。この考えが科学的に立証されたのは19世紀の後半に入つてからである。即ちZweifel(1876)は,分光器を用いて,胎児臍帯血中に酸素ヘモグロビンが存在することを立証し,且つ母体の呼吸停止により臍帯血が暗赤色化し,呼吸の再開により再び明るい赤色に変ずるのを認めた。Cohnstein u,Zuntz(1884)は臍帯静脈血の酸素含量が臍帯動脈血のそれよりも多いことを証明し,酸素が経胎盤的に移行するという考えを決定的なものにした。しかし胎盤は単なる濾過膜ではなく,生活組織であつて,通過する物質に化学的変化を起させたり,特殊な性質を有していることは数多くの研究によつて知られている。現在の所,酸素等のガス体の胎盤通過は物理的拡散によると考えられているが,胎児の呼吸器官としての胎盤の生理的機能について,最近までの文献より2〜3の考察を行つて見た。
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