今月の臨床 不妊症はどこまで治せるか
ARTの実際
11.培養条件に関する注意点
野田 洋一
1
,
広瀬 雅哉
1
,
山本 嘉昭
1
,
後藤 康夫
2
1滋賀医科大学産科婦人科
2京都大学医学部婦人科学産科学
pp.159-163
発行日 1994年2月10日
Published Date 1994/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901607
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ヒト体外受精・胚移植法およびその関連技術,いわゆる assisted reproductive technology(ART)は技術改良とともに急速に普及し,いまや不妊治療の現場で欠くべからざる治療手段となっている.しかしながら,その成功率(生産率)は必ずしも満足すべきレベルに達しているとは考えられない.成功率向上のためには種々の改善が必要と考えられるが,胚培養法もその一つであろう.実際 ヒトの体外受精胚を胚盤胞にまで培養することは難しく,途中で胚発生停止や発育遅延を起こすことが知られている.この胚発生停止や発育遅延の現象は,ヒト胚に限ってみられる現象ではなくて,哺乳類初期胚を体外培養した場合,種普遍的にみられる現象である,とくに,マウスにおいては主として2細胞期で胚発生が停止するため,“in vitro 2—cell block”と呼ばれ,30年以上も前から多くの研究者の研究対象となってきた.この現象はけっしてin vivoではみられないことから,この現象が起こる原因を解析することは,とりもなおさず初期胚発生に及ぼす卵管,子宮内環境の解析につながり,さらにヒト体外受精・胚移植法における理想的な培養法の開発につながるものと考えられる.そこで本稿では胚発生停止現象がなぜ起こるのかということの解析を通して,胚培養条件の注意点を探ってみたい.
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