今月の臨床 治療にてこずる感染症
クラミジア
4.治療と治癒の判定
菅生 元康
1
Motoyasu Sugase
1
1長野赤十字病院産婦人科
pp.1044-1046
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901429
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欧米先進国においては過去10年以上,性感染症(STD)の中でクラミジアトラコマティス(以下クラミジア)感染症が最も多い疾患として認識されていた。一方,本邦では厚生省が1987年から行っているSTDサーベイランス事業のデータに基づくと,つねに最も多かった淋病様疾患(淋菌感染症)にかわって陰部クラミジアの報告例数が首位になったのは昨年度からのことである。このことは患者発生数の動向以外に,本邦での臨床医のクラミジア感染症に対する認識がようやく欧米諸国なみに深まってきた現われとも考えられる。
われわれは1986年よりクラミジア感染の診断を開始したが,その当初より感染患者の多さに驚かされた。また1987年からはSTDサーベイランスの定点としてわれわれが診断した症例の報告を行っているが,対象5疾患のなかでは他疾患を引き離して現在までつねに報告数が最も多い1)。本稿ではわれわれの扱ったこれら多数の症例の経験を基にして,女性性器クラミジア感染症の治療法の要点と治療効果判定について解説する。なおわれわれが治療(薬剤投与)対象としたり,サーベイランスに報告するクラミジア感染患者とは原則として子宮頸管部にクラミジア抗原または核酸が証明されるか,培養法でクラミジアが分離された症例に限っている。抗体検査の結果だけでクラミジア患者と診断し薬剤投与を行ったり,サーベイランス報告症例に含めたりすることはしていない。
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