Current Research
ヒト胎盤における物質輸送能の特性—膜レベルでの解析を中心に
飯岡 秀晃
1
Hideaki Iioka
1
1奈良県立医科大学産婦人科
pp.195-200
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901188
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はじめに
胎盤機能が胎児発育に果たす栄養学的な役割の重要性は,今さら言を待たない。胎盤での各種物質の輸送には絨毛上皮が重要な役割を果たしている。ヒト胎盤絨毛上皮の母体側には多数の刷子縁が存在し,絨毛間腔で母体血液との直接の接点となる。刷子縁の存在により絨毛上皮の吸収面積は,飛躍的に拡大される。さらに,ヒト胎盤絨毛上皮刷子縁膜には,小腸や腎近位尿細管の刷子縁膜と同様,アミノ酸などの能動輸送機構が備わっており,胎児への安定した物質輸送を可能にしていると考えられている。一方,胎盤絨毛は,胎児で産生された尿素などの老廃物の輸送にも関与していると考えられている。近年,ヒト胎盤より分離した絨毛上皮膜小胞を用いた検討で,各種物質の輸送機構の解明がなされ,その全体像が明らかになってきた。
以下,われわれの行った基礎的な研究成績を中心に,ヒト胎盤の物質輸送能の特性につきまとめてみた。
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