メルボルン便り
常識も移り変わっていく—メルボルンでの暮らし その2
堀口 文
1
Fumi Horiguchi
1
1メルボルン大学医学部地域医療学教室婦人健康センター
pp.124-125
発行日 1992年1月10日
Published Date 1992/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900724
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メルボルンの市街地はシティCityと呼ばれています。Cityは端から端まで見渡せる程度のこじんまりした範囲で道路が京都や札幌のように碁盤の目になっています。この道路を市電トラムが小まめにストップして市民の足になっています。Cityの建物は新旧の対照宜しく調和がとれ,20ほどある超高層ビルもメルボルンのダイナミックな空に映えるよう美しく設計されています。そしてこの市街地から美しい住宅が郊外の四方八方に広がり,また交叉路で眺めると前後左右にのびた道路のその広さ,長さに気が遠くなります。
Cityから車で数分の北の隣接地には広大なキャンパスを持つメルボルン大学があり,その周囲をとりかこむように大学の付帯施設があります。大学はイギリスの制度をとり入れており,人文科学,自然科学,その他すべての学部が集まって綜合大学を作っています。学部間の交流もなかなか盛んで,医学部でも倫理問題や教育・思想問題(ここでは今女性のフェミニスム運動が盛んです)を議論したり考える場合には各方面の専門職の人達がすぐ集まり,数多くのmeetingがひっきりなしに開催されています。思索しながら行動するという大学の特質が例えば体外授精や臓器移植を盛んにし,また1991年から医療拒否もできるような法案の立法化を生む土壌を育んでいるのかもしれません。
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