今月の臨床 更年期障害
更年期の症状をどう把えるか
13.早発閉経
楠田 雅彦
1
Masahiko Kusuda
1
1佐世保共済病院産婦人科
pp.543-545
発行日 1991年5月10日
Published Date 1991/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900412
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
更年期を特徴づける最大の症状は閉経である。早発閉経は通常の閉経年齢より遙かに早い40歳以前の閉経(1年以上の持続性続発無月経),卵胞発育の状態を示すエストロゲンの低下とLH,FSHの上昇(去勢婦人レベル)が診断の根拠とされている卵巣原発性無月経症である。頻度は40歳以下の婦人の1%,無月経患老の5〜10%位とされている1)。閉経の機構はよく判っていないが,早発閉経の成因として先天的に卵子数が少ないのか,閉鎖吸収が異常に早く進行することなどが想定されて来た。症状は早過ぎる閉経のほか,普通の更年期によく見られる自律神経症状,精神神経症状,長期にわたると,性器,皮膚,血管系,骨の老化症状を始め種々の代謝異常を認めることもある。また生殖年齢にある若年婦人では無月経や不妊による精神的苦痛も無視できない。神経症状発症の頻度や程度は,普通の更年期のそれより低く,かつ軽いとされている。また神経症状を訴えない場合でもエストロゲン剤の補充療法を一定期間施行すると,中止後に症状が発現するといわれる。
主症状である続発無月経を始め,これらの低エストロゲン症に起因する症状は,いずれも生命を脅かすほどの重篤なものでなく,つい軽視され,放置されてしまう可能性が高い。しかし平均余命が著しく延びた今日,女性が心身ともに早く老化することは好ましくなく,適正な治療で心身の健康を維持し,成人病に属する代謝性疾患の発症を予防することは,これからの老齢化社会を迎えるに当ってきわめて重要である。また,生殖年齢にある婦人が適正な治療によって妊娠すればこれにすぎるものはない。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.