今月の臨床 不育症—その対策のすべて
検査・診断の進め方
21.不育症か不妊症か(Early pregnancy factor)
香山 浩二
1
Koji Kayama
1
1兵庫医科大学産婦人科
pp.70-71
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900274
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一般に臨床的に妊娠と診断された症例の約15%が自然流産に終わり,その40〜50%は染色体異常によるものであることが細胞遺伝学的研究により明らかにされている。しかも,染色体異常の大部分は受精時に成立し,これが致死因子となって着床前後に大部分が死滅してしまうものと考えられるため,臨床的に妊娠と診断される前に淘汰される胚の割合は全受精卵の50%以上にも及ぶものと推定されている1)。
hCGの測定と超音波診断の応用により妊娠の臨床的診断は容易となってきた。特に最近は前者の特異的微量測定により予定月経前のいわゆる準臨床的subclinicalあるいは生化学的biochemical pregnancyと呼ばれる時期の妊娠診断も可能となってきた。しかし,体外受精—胚移植の場合を除いて,生体内での受精の成立あるいは受精から着床に至る受精卵の生死に関する診断はblack boxとして残されていた。1977年Morton一派によって,Tリンパ球のロゼット形成能抑制作用をもつ因子,early pregnancy factor(EPF)が受精直後より母体血中に出現することが見出され2),in vivoにおける受精の診断に道を開いた。また,1985年にはO’Neillによって受精直後に血小板減少thrombocytopeniaを誘発する因子としてplate-let activating factor(PAF)が受精卵より産生されることが見出され3),EPFと同様にPAF測定によっても受精ならびに受精から着床に至る胚のviabilityの診断が可能であることが示された。
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