今月の臨床 不育症—その対策のすべて
原疾患との関わり
1.不育症とは
富永 敏朗
1
,
竹内 譲
1
,
佐々木 博正
1
Toshiro Tominaga
1
1福井医科大学産科婦人科学教室
pp.9-11
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900254
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
概念
妊娠は成立するが流早死産を繰り返して生児がえられないものを不育症と呼ぶ。その大部分は習慣流産(連続3回以上の自然流産の繰り返しをいう)であり,したがって不育症を習慣流産と同義語としても用いられる。
不育症は,その原因とみなされるものがきわめて多種多様であるのが特徴である。原因のなかには不妊症のそれと共通するものが含まれており,また受精から着床周辺期に至る過程の中絶が著しく高頻度に起こっているという最近の知見から考えて,不妊症と密接に関連があるものである。また不育症は臨床的に妊娠成立以降周産期に至るまでの広い範囲が対象となり,周産期医学の分野とも密接な関連がある。不育症のもう一つの特徴は,原因とみなされるものが不明なことがきわめて多いという点である。しかし最近の医学の進歩によって従来不明であった原因とみなされる異常の診断法が急速に進歩し,さらにこの異常に対する治療法の開発に著しい進展がみられるようになった。これは特に免疫的異常が原因と考えられるものについて顕著であり,今後不育症の原因の診断と治療の進歩に明るい展望をもたらしつつある。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.