増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック
Ⅲ. 産科編
❸分娩時・産褥期の緊急対応
子宮内反症
金西 賢治
1
1香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学
キーワード:
全子宮内反症
,
不全子宮内反症
,
子宮整復術
,
産科危機的出血
Keyword:
全子宮内反症
,
不全子宮内反症
,
子宮整復術
,
産科危機的出血
pp.271-275
発行日 2024年4月20日
Published Date 2024/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211239
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33歳,女性,3妊2産.妊娠40週4日で陣痛発来にて入院となった.これまでの妊娠健康診査では問題はなかった.分娩進行も問題なく子宮口全開大時に自然破水したのち,頭位にて正常経腟分娩に至った.新生児は男児で3,560g,アプガースコアは1分後9点,5分後10点であった.児娩出後30分以上経過したが胎盤が娩出されないため,左手で子宮底を圧迫しつつ,右手で臍帯をやや強めに牽引したところ,抵抗を感じながら胎盤は娩出された.胎盤とともに暗赤色の腫瘤が腟内から会陰部まで突出し,同時に患者は激しい痛みを訴えた.患者の意識は清明で血圧110/70mmHg,脈拍100回/分,体温38.6℃であった.完全子宮内反を考え,疼痛緩和と子宮の弛緩を期待しニトログリセリンを投与し,用手的な整復を試みた.術者の左手で内反した子宮底を覆うようにしながら頭側に押し上げようとしたが,反転部位の絞扼輪の抵抗が強く,激しい痛みもあり成功しなかった.出血は持続し,血圧も80/60mmHgと低下,顔面も蒼白となったため,急速に細胞外液を点滴しながら手術室に搬送し,循環状態を安定させ全身麻酔下で再度,用手的整復術により子宮を整復した.整復子宮の維持と子宮からの出血に対し,子宮内止血バルーンタンポナーデによりその後の出血も減少低下し,全身状態も安定した.
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