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はじめに
骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse : POP)は増加傾向にあり,治療の究極は手術療法である.近年,腹腔鏡下手術の普及とあいまってPOPの腹腔鏡下手術が広まりつつある.POP手術は20世紀には経腟的(腟式)手術が主流であったが,今世紀に入ると腹腔鏡下手術―主として腹腔鏡下仙骨腟固定術(laparoscopic sacrocolpopexy : LSC)―が多くなり,わが国ではこれを婦人科医より泌尿器科医が好んで行うようになっている.LSCは非再発率や性交機能の面で腟式手術に勝るとされているが,われわれの経験では腟式手術は少なくとも非再発率の点ではLSCに劣らない.そして腟式手術はLSCより手術時間は短く,治療費も少ない.それゆえ,POPの主役である高齢者(おおよそ70歳以上)には腟式手術がよい適応と考えられる.
腟式手術の主柱は腟式子宮全摘術に後続する腟上端の吊り上げ術(DeLancey1)のLevelⅠの修復)であり,吊り上げる部位として現今最も頼れる組織は仙骨子宮靭帯(uterosacral ligament : USL)といえよう.欧米でも多くの術者が腟式native tissue repair(NTR)を推奨しており,LevelⅠの修復の支持拠点にはUSLを採用している2).またPOP手術の基本は腟の上端を確実に吊り上げ支持することであるとしている3, 4).仙骨子宮靭帯固定術(USL suspension : USLS)では,尿管に糸がかかることによる尿管閉塞がいまわしい副損傷であり,断端脱再発の防止策が手技上の要点である.ここではこの2点を取り上げ,われわれの体験をもとにその対策を図説した.
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