症例
子宮頸部・内膜細胞診異常のみで早期卵管癌を疑った1例からの文献的レビュー
土橋 裕允
1
,
芦原 敬允
2
,
田中 智人
3
,
植木 健
1
1公立宍粟総合病院産婦人科
2市立池田病院産婦人科
3大阪医科大学付属病院婦人科・腫瘍科
pp.853-857
発行日 2020年8月10日
Published Date 2020/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409210131
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▶要約
卵管癌は稀な疾患で,早期発見は困難なことが多い.子宮頸部・内膜細胞診で腺癌細胞を認める以外に卵管癌を疑う所見はなく,手術にて卵管癌の診断に至った症例を経験したので報告する.症例は60歳2妊2産,症状や内診では異常を認めず,経腟超音波検査では両側付属器腫大や腹水貯留はなかった.MRI,FDG PET/CTでも有意所見はなかった.内膜細胞診で清明な背景に腺癌細胞を認めたため,卵管癌および腹膜癌を疑い,腹式単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術,大網切除術を施行した.腹腔内および摘出標本に肉眼的病巣は認めなかったが,腹水細胞診は陽性であった.病理組織診で左卵管采より高異型度漿液性癌を認めたため,最終診断は卵管癌ⅠC3期であった.術後TC療法を6コース施行し,現在術後18か月で再発はない.本症例のように,子宮内膜細胞診で正常な内膜細胞や,清明な背景に明らかな腺癌細胞を認める場合,卵管癌を念頭に置いた対応が必要である.
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