特集 LH-RHとそのagonist
LH-RH agonistの過排卵刺激への応用
宮崎 和典
1
,
奥田 喜代司
1
,
杉本 修
1
Kazunori Miyazaki
1
1大阪医科大学産科婦人科学教室
pp.653-658
発行日 1989年7月10日
Published Date 1989/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208033
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1971年,A.V.Schallyら1)によってGnRHの化学構造が明らかにされ,またこの知見に引き続き,多くのGnRH analoguesが合成されるようになってから,性腺の異常に基づく疾患に対する研究および治療は飛躍的な進歩を遂げた。特に,現在,間脳,下垂体,性腺の生理的機能の解明にあたっては,GnRHは欠かせないものとなっている。本来,GnRHは間脳視床下部で生成され,下垂体門脈を通って脳下垂体に働くわけであるから,その研究の中心は,下垂体の反応性をめぐる機構の解明であったことは当然である。
しかし,1978年,Knobilらのグループによって2),GnRHの分泌がpulsatileに行われているという新しい概念が提唱されて以来,視床下部,下垂体,卵巣をめぐる相互作用,フィードバックの研究から,興味の対象はGnRHのpulsatileな投与により,間脳性無月経の治療に応用する臨床的問題に移ってきた。このような治療的側面は,GnRHの持つ本来の作用を,排卵障害の治療に利用するという方向から,GnRH analoguesの開発の結果,副産物として生じたGnRHをはるかに上回る強力な作用を持つagonistを,偽閉経療法として子宮内膜症の治療に用いたり,避妊に利用したり,medi-cal hypophysectomyといわれる中枢の抑制を通じて,PCOの治療や,体外受精の過排卵刺激に利用するといった応用,展開の時代に進もうとしている。
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