症例
特発性尿崩症の妊娠分娩例—自験例1例と本邦報告例の検討
金子 尚仁
1
,
小田 隆晴
1
,
関口 裕子
1
,
大野 勉
1
,
小宮 雄一
1
,
広井 正彦
1
Naohito Kaneko
1
1山形大学医学部産科婦人科学教室
pp.727-730
発行日 1984年9月10日
Published Date 1984/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207058
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妊娠,分娩に関連した尿崩症は本邦では約60例が報告されているにすぎない。中でも妊娠前より特発性尿崩症と診断されている例は本邦では10数例にすぎず,その頻度は4〜8万例に1例とされ,極めてまれである。今回われわれは特発性尿崩症の妊娠分娩例を経験したので,過去の本邦報告例37例を合わせて文献的考察を加え報告する。
症例は28歳の1回経産婦で,10歳頃より自覚症状があったが放置し,帝王切開後に特発性尿崩症と診断され,経口剤投与をうけていた。今回もCPDの診断で帝王切開となった。特発性尿崩症では妊娠により尿崩症症状は悪化する場合が多いが,大部分は産褥期早期に軽快する。産科的異常としては妊娠中毒症が多く,分娩後子宮収縮不全もみられた。一方,妊娠中発症例では82.1%が分娩後に軽快し,産科的異常は妊娠前発症例とほぼ同様であった。また微弱陣痛,乳汁分泌不全もみられず,妊孕能,新生児への影響もないとされている。
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