増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
婦人科編
II 内分泌・不妊
子宮内膜症
甲斐 健太郎
1
,
奈須 家栄
1,2
,
楢原 久司
1
1大分大学医学部産科婦人科学教室
2おおいた地域医療支援システム構築事業・産婦人科分野
pp.90-93
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103680
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疾患の概要
子宮内膜症は,生殖年齢女性の約10%にみられる慢性の良性疾患であり,子宮内膜組織と類似した組織がエストロゲン依存性に子宮外で増殖する疾患である.異所性子宮内膜組織の多くは骨盤内に発生するが,稀に肺,腸管,鼠径部,臍,腟などにも発生しうる.発生機序については,子宮内膜移植説や体腔上皮化生説など諸説あるが,いまだ解明されていない.自然史もいまだ不明であるが,妊娠中や閉経後は本疾患が軽快することが知られている.一方で,子宮内膜症発症のリスク因子として,未産婦,早発初経や遅発閉経,頻発月経,過長月経,子宮形態異常などが報告されている.生殖年齢女性における主な症状は,月経困難症,慢性骨盤痛(性交痛,排便痛),卵巣子宮内膜症性囊胞,そして不妊(卵管周囲癒着,各種サイトカイン産生による骨盤内環境悪化)である.また囊胞径の大きな腫瘍や40歳以上の症例においては,卵巣子宮内膜症性囊胞から明細胞腺癌や類内膜腺癌へ癌化するリスクが上昇する.
子宮内膜症の確定診断は,腹腔鏡や開腹手術により組織学的に病変を確認して行われ,重症度分類には一般的にアメリカ生殖医学会の進行期分類が用いられる.しかしながら,臨床的に子宮内膜症による疼痛を疑う場合には,腹腔鏡検査に先立って各種薬物療法が開始されることが多い.近年の晩婚化により妊孕性の温存が必要な症例が増加し,薬物療法による保存的治療を行う機会も増加している.
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