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子宮内膜症(endometriosis)とは子宮内膜が異所性にみられる病変で,卵巣,卵管,骨盤内組織などに発生することが多い.子宮筋層にてみられる場合は腺筋症(adenomyosis)と呼ぶ.この異所性内膜組織は本来の内膜と同様に周期性を示す.卵巣では血性内容を容れる囊胞を形成し,チョコレート囊胞とも呼ばれる.子宮内膜症は,組織学的には内膜腺とその周囲の内膜間質組織よりなり,ヘモジデリンを貪食した組織球の浸潤を伴うことが多い.内膜腺がなく内膜間質成分よりなる子宮内膜症を間質内膜症(stromal endometriosis)という.本来,子宮内膜症は女性特有の疾患であるが,極めて稀に男性においてみられる.報告は英語論文で10例以下であり,その多くは泌尿生殖器組織である1~7).
傍睾丸に発生した自験例1)を紹介する.患者は69歳の男性で,左陰囊水腫の臨床診断のもと両側除睾術が施行された.本患者は9年前に針生検により前立腺癌(腺癌,Gleason score:4+5=9)と診断され,その後今回の手術まで長期の女性ホルモン療法を受けている.手術検体は,肉眼的に左睾丸は5.2×3.1×3.0cm大,多囊胞性で血性の漿液性内容を容れる.囊胞壁には出血,ヘモジデリンの沈着をみる.睾丸実質は高度の萎縮を呈す(図1).組織学的には囊胞内壁はほぼ一層の円柱状細胞で被覆される.間質では子宮内膜間質細胞に類似した均一な小型類円形細胞の増生,豊富な毛細血管,ヘモジデリンを貪食した組織球の浸潤が観察される(図2).その中に少数の小型腺管状の構造を認める.免疫組織学的には,囊胞の被覆細胞と小腺管組織はCAM5.2,vimentin,calretininに陽性,estrogen receptor,progesterone receptorは陰性であり,上皮細胞ではなく中皮細胞と考えられる.一方,間質細胞はCD10,estrogen receptor,progesterone receptorが陽性であり,内膜間質細胞と考えられる.部位,組織像,免疫染色より陰囊水腫の壁に出現した傍睾丸の間質内膜症と診断される.
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