臨床医のプライマリ・ケア オンコロジー
婦人の癌と婦人科癌—その頻度と疫学
竹内 正七
1
,
小幡 憲郎
1
,
児玉 省二
1
Shoshichi Takeuchi
1
1新潟大学医学部産婦人科教室
pp.515-520
発行日 1982年7月10日
Published Date 1982/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206645
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種々の疾患の罹患頻度を性差(男女差)という観点から検討すると,たしかに女性に頻度の高い疾患,男性に好発する疾患,男女間にその発生頻度に差のない疾患が存在する(表1)。このうち,明らかに女性に好発するものとしては,骨粗鬆症,大動脈炎症候群,鉄欠乏性貧血,慢性甲状腺炎,SLE,汎発性硬皮症,慢性関節リウマチなどがある。このような疾患は従来ともすれば,他科領域あるいは境界領域の疾患として取り扱われてきたが,これらの疾患の多くは,性周期を主体とした月経,妊娠,分娩,産褥,閉経など一連の性現象に伴う内環境の変動により,その発生,症状,経過,予後などが影響を受けることが知られている。したがって今後の産婦人科医のあり方としては,疾患対象を女性生殖器から女性に発生した他科あるいは境界領域疾患に積極的に拡大してゆく,"primary physician for women"の立場をより明確にしてゆくことが必要であろう。
女性人口に占める高齢婦人(50歳以上)の比率は1980年に25.9%であったが,2000年には36.0%に増大すると推測されている2)。人口の老齢化が進行するに伴い悪性腫瘍の発生は,さらに増大するものと考えられる。婦人に発生する悪性腫瘍の約半数(性器17%,口腔・咽頭2.0%,甲状腺1.1%,乳房27.0%,皮フ1.0%,直腸4.5%)は直達可能であり,physical examinationにより発見できるといわれる3)」。したがって,産婦人科医にとっては婦人性器悪性腫瘍はもちろんのこと,他科領域に属している腫瘍に関しても十分な認識を有することが癌の早期発見にとって必要不可欠となる。
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