トピックス
胎盤性サルファターゼ欠損症と伴性劣性遺伝を示す魚鱗癬
田部井 徹
1
1自衛隊中央病院産婦人科
pp.499
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206643
- 有料閲覧
- 文献概要
妊娠後半期の母体尿中エストリオール(E3)値は,胎児胎盤機能の指標とされている。E3の異常低値(5mg/日以下)は胎児死亡,無脳児あるいは先天性副腎発育不全症などの胎児因子によることが多い。一方,胎盤性サルファターゼ欠損症は,胎児異常を伴わずに胎盤におけるdehydroepiandrosterone-sulfate (DHA-S)から遊離型DHAへの転換酵素であるステロイドサルファターゼ活性が欠如しているために母体尿中E3値が3mg/日以下の異常低値を示す疾患である1,2)。本疾患は,1969年FranceとLiggins3)が最初の1症例を報告して以来現在まで世界各国より64症例が報告されているに過ぎないまれな疾患である。最近,「TextBook of Endocrinology」Williams,R.H.編の最新(第6)改訂版に著者らの文献1)を引用して妊娠中の内分泌代謝異常症として紹介された。
本疾患の臨床的な特徴は,低エストリオールのため子宮頸管の熟化が障害され予定日超過になりやすく,またオキシトシンなどの子宮収縮剤に対する子宮筋の反応性が悪く有効陣痛が得られず帝切になることが多い。さらに出生児がすべて男児であることから性染色体の関与が考えられ遺伝的にも興味深い。France4)は,文献報告された本疾患の36症例を中心として,臨床的な特徴を概説している。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.