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トピックス
胎児性ワーファリン症候群
fetal warfarin syndrom
田部井 徹
1
1自衛隊中央病院産婦人科
pp.914
発行日 1981年12月10日
Published Date 1981/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206541
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心臓外科の急速な進歩に伴い,心疾患手術後の予後が改善され,分娩は不可能と思われた婦人の挙児に成功した症例が次第に増加している。
妊娠初期における母体の凝固能は亢進し,中期以降には線溶系の低下がみられる。従って,人工弁とくに機械弁置換術を受けたり,あるいは妊娠中に重篤な血栓性静脈炎を合併した妊婦は血栓防止のため抗凝固剤の使用が欠かせない。妊娠中に母体に投与された抗凝固剤は,流産,胎児の催奇性,頭蓋内出血あるいは分娩時の出血など重篤な副作用を呈することが指摘されている1〜3)。現在,臨床上広く使用されている抗凝固剤は,クマリン系のWarfarin Heparin とDipyridamole (ペルサンチンなど)の三種類が主なものである。Warfarinの抗凝固作用はビタミンK拮抗によるが,胎盤の通過性が良好のため胎児新生児への影響が認められる。抗凝固剤であるHeparinは胎盤不通過であるため胎児への影響はWafarinに比べ少ないという特徴を有するが,注射投与のため長期間の使用が不可能である2)。一方,Dipyridamoleの血栓予防効果はWarfarinより劣る4)。Warfarinの催奇性は,臓器の欠損でなく発育不全であるので,妊娠初期の服用だけでなく後期にしても奇形発生の危険がある。後半期に使用したWarfarinの副作用としては,母体の分娩時出血が多いことである。
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