Modern Therapy 炎症治療--感染症を中心に
抗炎症薬投与の考え方—炎症の生化学的分析を背景として
鹿取 信
1
Makoto Katori
1
1北里大学医学部薬理学教室
pp.509-516
発行日 1980年7月10日
Published Date 1980/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206273
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「炎症反応は侵襲に対する生体の防衛反応である」という考え方は,Aschoff以来広く病理学の教えるところである。感染あるいは他の侵襲に対し,血管を拡張させ,小分子の血管外漏出を促進して侵入物をリンパ管へと導くが,ついで細静脈の内皮細胞間隙が開き,血漿蛋白質が組織間隙に漏出する。これにより抗体,補体,血漿キニン系,血液凝固系,線溶系が組織間隙において活性化され,さらに各種の血漿中のinhibitorsが組織間で作用する。血管透過性亢進とはある意味で自己と非自己を認識する機構であるリンパ管へ侵入物を導く作業であるといえるかもしれない。
これらの生体内反応に侵入物がなお抵抗してとどまる場合,補体の活性化を介し,多核白血球が血管外に游出し食作用をする。さらにおくれてリンパ球の浸出が起こってくる。こうして一連の生体反応は侵入物を局所で処理し,異物認識機構へ連動させるものと思われる。侵入物がこれらで処理できない場合におこる肉芽形成はさらに宿主全体から局所を分離する試みであり,それが肉芽で囲みきれないほど大きい場合,例えば移植片の場合にはそれにいたる動静脈に血栓を形成し,血流を朴絶することにより排除すると思われる。
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