Modern Therapy 症候群の取扱いをめぐって
性分化異常を伴う症候群
水野 正彦
1
Masahiko Mizuno
1
1東京大学医学部産婦人科
pp.359-363
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206243
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出産に立会った医師や助産婦は,新生児が誕生すると,"男の子さんが生まれました"とか,あるいは"可愛いい女の子さんです"とかいって,ただちに性別を告げるのが普通である。この際の性別は,いうまでもなく外性器の形態によって判定されており,通常はそれで間違いはない。
しかし,1,000の分娩に2例ぐらいの割合で性分化異常のために,性別の判然としないものが存在する。この中には,外性器の形態が男女いずれとも決定し難いものや,外性器の性別は比較的明瞭であるが,性腺の性別や性染色体がそれとが逆の症例などが含まれる。このような場合には,医師や助産婦の判断が,生まれた子の将来にきわめて重大な影響を与えることが少なくない。ヒトは,法律上あるいは社会生活上,男か女かそのいずれかに区別して取り扱われるが,その根拠は出生後14日以内に市町村役場に届けられる出生届けでの性別の記載にあるからである。性分化異常には,治療すれば治し得る先天性副腎性器症候群のようなものから,絶対に治し得ない性染色体異常を伴う症候群までにいたるさまざまな種類があるが,これらの症例の予後は,出生時に診断がついたものと,思春期以降になって種々の理由から性別の転換を行なわなければならなくなったものとでは,大きく異なってくる。したがって,出生時の性別の判断は慎重でなければならぬし,少しでも疑わしいところがあれば,専門医の診断を仰ぐことが大切である。
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