指標
悪性腫瘍治療におけるhyperthermiaの意義(その1)—その現況と将来性
野澤 志朗
1
,
宇田川 康博
1
,
栗原 操寿
1
Shiro Nozawa
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.333-341
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206239
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現在,婦人科領域悪性腫瘍の治療の中心は手術および放射線療法であるが,しかし,手術不能の進行あるいは末期癌患者の治療法となると,化学療法や免疫療法が注目されているとはいえ,いまだ決定的なものとは見なし難い。特に放射線および化学療法では正常細胞,臓器にも影響を及ぼすため,合併症がある場合や衰弱している患者では,かえって重篤な副作用のために期待した効果が得られないばかりか,不測の転帰をとる場合もないとはいえない。そのために正常細胞にはほとんど影響を及ぼさず,悪性細胞だけに選択的に傷害を与えるような治療法の確立が待ち望まれている。そこで本稿ではその条件を満足させ得る可能性のある治療法の一つとして最近急速に注目を集めているhyperthermiaについて,その歴史的背景と現況並びに将来への展望を中心に,われわれの予備実験の成績をも含めて2回にわけて概説してみたい。本号ではhyperthermiaの歴史的背景と諸外国およびわが国における現況を臨床レベル,実験腫瘍レベル,in vitroでの細胞レベルに分けて述べ,次号ではわれわれの培養細胞を用いた実験結果とともに,hyperthermiaの作用機序,将来への展望などについてふれてみたい。
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