実地臨床手技のエッセンス 妊娠に合併する難症のとり扱い--他科よりのアドバイス
妊娠と腰痛疾患
森 健躬
1
Takemi Mori
1
1東京厚生年金病院,整形外科
pp.871-874
発行日 1979年11月10日
Published Date 1979/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206130
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妊娠可能な年齢層にみられる腰痛疾患にはいろいろある。しかし,妊娠に合併し,そのうえにこれを管理しなければならないものは,現実にはきわめて少ない。事実,われわれの所で,妊娠中の腰痛を治療することは,ほとんどないといってよく,ごくまれに,既存の椎間板ヘルニアの増悪があったり,あるいは増悪するのではないかと不安になって相談に来院する例があるにすぎない。ただ,ときおり,股関節の痛みを腰痛と考えて来院するものもないわけではない。これは,乳幼児期の先天性股関節脱臼の治療後に発生した,二次性変形性股関節症による股関節痛である。最近は,患者自身も,痛みの個所を正確に表現するようになってはいるが,なかには模然と腰が痛いという人もある。抗生剤治療が十分でなかった時代には,腰椎カリエスもあり,この疾患の管理が必要であったが,最近では,これも激減し,しかも,年長者に発生するものが多くなっている。われわれの所でも,年々6〜7例の新しい脊椎カリエスを発見してはいるが,妊娠可能な年代の女性の症例は,きわめて少数にすぎず,この10年間にわずかに2例あっただけである。しかも,これらの例も意識的に妊娠をさけているので,妊娠に伴って原疾患のコントロールを必要としたものはなかった。これらの点を考慮して,まず当院の保健指導部での相談症例の中から腰痛の発生時期などを調査し,それにもとづいて腰痛の診断と処置を考えたい。
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