実地臨床手技のエッセンス 輸血と全身管理
輸血ひとくちメモ
安全な輸血のために—過誤による不適合輸血をさけるために
寺尾 俊彦
1
1浜松医科大学産婦人科教室
pp.102
発行日 1979年2月10日
Published Date 1979/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205989
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人の血液型はABO,Rh,MN,Lewis,Duffy,P,Kell,Kiddなど数多くの種類が知られており,また,さらに主要組織適合抗原(HLA)も考慮するとその組合わせは無限に近い。輸血も臓器移植の一種であり,可能なかぎり適合したものを輸血せねばならない。
不適合輸血のもつ意味は広く,医学が進歩するとともにその範囲が広がっていくともいえる。新しい血液型の発見,輸血既往や妊娠による抗体産生の機序が明らかにされるにつれ,適合輸血はより厳格な意味を要求されるようになった。輸血する場合には,単に輸血する時点で副作用がなければ良いというだけではなく,あとになっても障害のない輸血を心がける必要がある。たとえばRhDやEの不適合輸血による不規則抗体産生に対する配慮はもちろんのこと,再生不良性貧血の出血に対し,長期間血小板輸注を行なう場合に抗血小板抗体,HLA抗体産生による治療効果の低下という面などにも配慮し,HLAを含む広い意味での適合した輸血をしなければならない。しかしながら,ここでは,もっと基本的なレベルにおける不適合輸血,すなわち過誤による不適合輸血に焦点を絞って述べてみたい。
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