原著
高単位エストリオール(100mg)内服剤による妊娠子宮腟部柔軟化に関する臨床的研究
中山 徹也
1
,
荒木 日出之助
1
,
高橋 諄
1
Tetsuya Nakayama
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.261-268
発行日 1977年3月10日
Published Date 1977/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205590
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今日の産科臨床では,陣痛計を用いて陣痛状況を正確に知ることができると同時に,微弱陣痛に対しては,Oxytocin,Prostaglandineなどを用いて,ある程度対処できるようになった。また,心拍計を組み込んだ分娩監視装置の応用により胎児管理も容易になり,さらに児頭と骨盤の適合性の問題もX線骨盤計測はもちろん,超音波による子宮内児頭大横径計測が可能になり,かつ帝王切開が比較的安全に行なわれるようになって,もはや産科医の悩みとなるほどのものではなくなった。しかるに軟産道の柔軟性・伸展性の良否に対しては,今日なお臨床的に用いうる,満足すべき普遍的な計測器の開発もなく,検者の勘に頼らざるを得ないばかりでなく,確実に子宮腟部の柔軟化・伸展性を促進せしめうる薬剤の開発もまた不十分といっても過言ではない。
現在,Estriolは妊娠末期子宮に対して子宮腟部軟化促進作用があるものと推定され,軟産道強靱症に広く試用されているが,Estriolの子宮腟部軟化促進に関する基礎的検討は少なく,わずかに本邦では九嶋・一条ら1)のEstriol投与時の頸管組織像の検討,畝木ら2)の頸管水分量の検討,斎藤3)の子宮頸組織電顕像の検討から,また,われわれ(中山ら4))は頸管組織における酸性粘液多糖体の組織化学的検討からEstriolの頸管軟化作用を示唆しているに過ぎない。
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