臨床メモ
催奇性ありとされた製品の発売禁止の結果
竹内 久彌
1
1順天堂大学産婦人科学
pp.803
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205487
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1973年8月に米国消費者製品安全委員会がスプレー式接着剤と染色体異常および奇形との関連についての,一つの報告を発表した。製品の販売は直ちに禁止され,市場から回収された。委員会は使用者,ことに妊婦に対する警告を公表し,染色体検査を受けるように勧めたが,6カ月後にこの禁止処分は撤回されてしまった。その後の検討では因果関係が証明されなかったからである。
このエピソードをとらえて,ニューヨーク州先天異常研究施設のHo okら(Science,191;566,1976)はその及ぼした影響を各地の遺伝相談所での反応から調査してみたのである。190の相談所からのアンケートの回答によれば,1,100件以上の問い合わせと延べ1,200日以上の時間がこの問題に費された。そして結果的にその相談が有効だったものは1件もなかった。8カ所のセンターで11件の羊水穿刺が行なわれたが異常なく,3カ所のセンターからは接着剤に触れたからという理由だけで8例の人工中絶があったと報告されている。
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