疾患の病態と治療 母体環境と胎児・新生児異常
母体の自己免疫疾患と胎児・新生児の異常—妊娠は自然の実験系である
竹内 正七
1
,
樋口 正臣
1
Shoshichi Takeuchi
1
,
Masaomi Higuchi
1
1新潟大学医学部産科婦人科学教室
pp.727-730
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205475
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各種の自己抗体成立により生ずる自己免疫疾患の病態について現在まで,数多くの知見が集積され,その病因解明における進歩はめざましいものがある。しかし,これらの研究は主として動物実験に重点がおかれて行なわれてきたといわざるを得ない。以前より,ある種の自己免疫疾患においては,その罹患婦人より出生した児に,一過性ではあるが,その疾患の病態を呈することが認められている。これは母体から胎児・新生児への自己抗体移行によるとされてきた。このように妊娠現象は自己免疫疾患にたいする「自然の実験系」1)ともいえるわけで,各種の影響因子を除外した状態で,母体よりの自己抗体の胎児・新生児への直接的な影響の観察が可能である。かくしてこれらの児への作用を詳細に観察することは,自己免疫疾患の病態解明の有力な手段となると考えられる。
そこで,本稿では,はじめに自己免疫疾患罹患妊婦と児との免疫学的相関について,主として液性免疫の面から述べ,ついで,代表的な自己免疫疾患について,主として胎児および新生児の側から免疫学的考察を加えてみることとする。
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