疾患の病態と治療 卵巣とその周辺疾患・Ⅱ
ホルモン産生卵巣腫瘍の診断と治療
山辺 徹
1
,
三浦 清巒
1
Tooru Yamabe
1
,
Seiran Miura
1
1長崎大学医学部産婦人科教室
pp.467-472
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205433
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ホルモン産生腫瘍は原則としてホルモンを産生ないし分泌する細胞から生じるもので,しばしば過剰のホルモンが分泌される結果,それぞれに特有な症候群としてみとめられることが少なくない。したがつて,臨床的に内分泌的影響を示す場合は,腫瘍の組織型をある程度推定することができる。そのためには,各種ホルモンがそれぞれどの内分泌細胞で産生され,分泌されるかを理解しておくことが大切であるが,すべての場合にその由来細胞を厳密に指摘することはできない。そのため内分泌的所見のみでは絶対的な診断基準とはならず,今日においてもホルモン産生卵巣腫瘍の診断と分類には形態学がその基盤をなしている。腫瘍の組織像が定型的であればそれのみで診断は確定しうるが,非定型的な例では内分泌的所見が診断の有力な手がかりとなる場合がある。一方,症状が不顕性であつても,内分泌細胞起源の腫瘍を否定することはできない。
個々の腫瘍に関する詳細な解説は他書にゆずることにし,本稿ではホルモン産生腫瘍の診断過程を理解するうえに必要な基礎的事項を中心に述べることにする。なお治療の面では,ホルモンを産生するからといつて他の卵巣腫瘍ととくに異なる点はなく,本質的にはその腫瘍が良性か悪性かを識別しておくことが最も重要な問題となる。
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