特集 日常診療上の狙いと盲点・II
手術か保存療法か
子宮内膜症
前山 昌男
1
Masao Maeyama
1
1熊本大学医学部産科婦人科学教室
pp.389-391
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204820
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子宮内膜症(endometriosis)という名称がSam—psonにより始めて用いられたのは1921年であるが,歴史的にはvon Rokitanskyが1860年にAdenomyomaを記載しており,きわめて古い疾患の一つであるが,その臨床像が月経痛,下腹痛,腰痛など婦人科疾患での主症状を呈する他疾患と鑑別を要する場合が少くない。本邦においても数年来,日産婦学会はじめその他の専門誌にしばしばとりあげられているいわゆる古くて新しい疾患の一つといえる。また,その特異的な組織学的所見から医学生の試験に標本を見せると大多数の者から即坐に正しい答がかえつてくる点から観念的には必ずしも診断の困難な疾患とは思えない。しかしながら,日常診療に当つている医師として子宮内膜症を常に念頭において対処しているか否かは疑問のあるところである。その一つの根拠として諸家の報告にみられるごとく前回手術時に子宮内膜症が認知されていないため,術後に症状の改善が認められず,かえつて悪化して再開腹術を受ける患者が意外に多い事実がある。したがつて,本文はエキスパートの医家にとつては蛇足かも知れないが敢えて本症に対する日常診療の狙いと盲点について言及する。
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