特集 私の手術・Ⅰ
子宮後屈の手術
名取 光博
1
Mitsuhiro Natori
1
1東京都立築地産院産婦人科
pp.455-459
発行日 1969年6月10日
Published Date 1969/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204045
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はじめに
近ごろでは子宮後屈の手術は比較的稀なものになつてしまつた。これは著者の勤務する施設が産院であるという特殊性だけによるものではないと思う。これは移動性の子宮後屈症があるという理由だけで不妊症患者への手術や,他の婦人科疾患で開腹したついでに,自覚症状もないが,軽度の前傾後屈があるなどの症例にAlexander AdamssheOperation(以下アレキサンダー手術と略す)を行なわなくなつたことによるものと考えられるが,同時に抗生剤が炎症性疾患にきわめて有効であるため,その後遺症としての子宮癒着症が見当らなくなつた理由も大きく影響していると考える。
アレキサンダー手術は術後性の手術部位の神経痛が起こりやすいなどという理由から,適応症例に対しても手術が避けられるとしたら誠に残念である。正しく手術のコツさえ呑み込めば,きわめて簡単な,しかも後遺症のない手術である。したがつて他の適応で開腹した場合,ことに子宮後屈はなくても永久避妊の手術,子宮外妊娠の手術時などでも,将来子宮下垂が予想されるような症例では積極的にアレキサンダー手術で,子宮を牽引固定すべきものと考える。以下記述する術式は恩師佐々木計先生(元東大助教授・元東大分院産婦人科医長)からの直伝で,今日でも全く改良の余地のないものと考えている。この文章を読まれて,その術式が少しでも複雑で,面倒な手術だと感じられる点があるとすれば,それは著者の文章の悪さか,不勉強のためである。
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