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I.はじめに
婦人科疾患と糖尿病というのは,あまり今まで注目されなかつた領域なんでしようけれども,このごろのように糖尿病がふえてまいりますと,特に私どものように成人病のクリニックに属するところでは,いろいろ注意しなければならぬ問題が確かにございます。婦人科領域の病気と糖尿病というものを実際に臨床的な立場で扱う場合に3通りに分けることができるかと思いますが,その1つは糖尿病と本態的に関連の多いと思われる中枢性の内分泌系列の異常に属する疾患,あるいはそう了解されうる疾患でして,どんなものがあるかというとクッシングなんかもございますし,子宮内膜の腺嚢増殖症そして悪性腫瘍の領域で子宮の内膜癌,外陰癌などが挙げられましよう,外陰癌の場合は,また糖尿病性の皮膚疾患ということも関連があるかもしれません。取りあえずこういうものをあげることができると思います。次には糖尿病から発生してくる婦人科的な疾患あるいは主訴といつたものがあります。糖尿病から当然末梢神経の変性とか血行障害とか皮膚の萎縮その他の異常,網内系の機能の低下とか,白血球増殖能の低下などという現象が導き出され,婦人科的にいえば,外陰湿疹あるいは外陰掻痒症などの病変群もありますし,また化膿性疾患もしばしば関連いたします。特にそれと神経性の異常とからみ合わせたものとして,大事なものに尿路機能の障害があります。そのほかに単純に更年期だと思つたのがいわゆる不定愁訴の形をかりた糖尿病にほかならぬ場合もないとはいえません。第3のカテゴリーに属するものとして,糖尿病であつてそれにかなり大きな婦人科的侵襲,具体的にいえば手術ですが,そういうものを加えなければならない場合,そのpoor riskの管理対策をどうするか,というような問題があるわけです。
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