薬の臨床
邦製界面活性剤TS−88を主剤とする錠剤避妊薬によるField-Testの成績
長野 正男
1
Masao Nagano
1
1中央鉄道病院産婦人科
pp.453-457
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203891
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はじめに
現今,世界の人口増加率は急カーブで上昇し,これが対策は各国の緊要事とされている。わが国では,受胎調節の普及により小家族主義の体制が確立したとはいえ,その失敗による人工妊娠中絶はなおかなりの件数に上る。その原因として考えられることは,現在実施されている各種避妊法には,それが完全に実施されるためには欠陥が必ずしも少なくなく,さりとてわが国では未だ未公認の経口避妊薬,子宮内避妊器具にしても万全の方法であるとはいい難く,これらの完全実施には多くの抵抗があることに基因している。しかしながら,旧来の方法の中,生活習慣化に当り比較的抵抗の少ないものに局所避妊錠剤があり,今後一層の普及が予測される。
ところで,局所避妊薬の殺精剤としては,従来,酢酸フェニール水銀,硫酸オキシヒノリンの二者が主剤と規定されていたが,これら薬剤による急性,慢性中毒の症例は未だ報告されていないとはいえ,有機水銀中毒の問題は,一連の農薬中毒事例,水俣病,阿賀野川流域での発生等で巷間を賑わし,すでに1960年岡島氏1)は毛髪内水銀量より本剤の長期間使用に対し警告を発している。
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