特集 子宮頸癌の手術療法--その5つの問題点をめぐつて
特に第3の膀胱支配神経すなわちN.pelvicus accessoriusをめぐつて
小林 隆
1
Takashi Kobayashi
1
1東京大学医学部産婦人科教室
pp.611-615
発行日 1967年8月10日
Published Date 1967/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203738
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はじめに
骨盤の解剖は各部のわずかなvariationを除けば,人種,個人の如何を問わず一定したものであるから,生体骨盤のpreparationまたはdissectionともいうべき子宮癌根治術式にそれ程大きな違いが生ずるとは考えられない。一昔前ならともかく,今日では術式の操作や手順に多少のちがい,廻り道があつても最後は同じ目的すなわち子宮の広汎全摘に到達するとみなすのが一般の常識である。換言すると,ともすれば術式に伴いがちないわゆる奥義的,神秘的ニュアンスはすでに薄れ,術式そのものに解剖学的客観性が確立して,この手術が著しく一般化してきたことを意味する。
とはいうものの一方では術式以前のところにまだ問題はあるようである。すなわち技と名のつくものに共通の現象かもしれないが,各自がはじめに習つた型や系譜からの影響は意外に強いもので,それからなかなか脱けられないのが常である。また技は実際に目で見なければ理解できない面がある。これを裏返していうと技の交流は実際にはなかなか困難で,いきおい技の閉鎖性,セクト性が生ずるのである。
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