特集 胎盤
その基礎と臨床
胎盤の組織培養
野嶽 幸雄
1
Yukio Notake
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科教室
pp.991-996
発行日 1966年12月10日
Published Date 1966/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203607
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はじめに
ひとたび妊娠が成立して母体および胎児に驚異的な諸変動が展開されるとき,その複雑微妙な調整を掌握するのが胎盤である。機能的には内分泌器官としての存在であるばかりでなく胎児の肺・肝・腎等の役割をも担い,しかも10カ月という限定された期間内に整然とダイナミックな任務を果し終える巧妙な機序は他の臓器に比較をみず,きわめて魅力的で,いわゆるplacentologistsの輩出するゆえんでもある。研究の焦点と着眼とは歴史とともに変遷し成書の記載も改訂されてきている。周知のGreenhill12)の産科書でもPhysiologyand Biochemistry of the Placentaの項で知名のplacentologistのE.W. Pageは1965年,13版には新たにImmunology of the Trophoblastの項を冒頭に飾り,胎盤がいわば同種移植物としての存在でありながらなぜに母体から廃棄されないかに対する諸説を引用している。まことに胎盤は個体生成の起源につらなる神秘の謎を秘めた存在というべく,なかんずくその主役を演ずるtro—phoblastをめぐつて解明を要する問題は多い。組織培養は有力な実験手段として古くから期待が持たれ,最近はまた術式の進歩に伴つて新たな着想の下に多方面の研究が行なわれるようになつた。
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