特集 新生児の研究と臨床--第1回新生児研究会シンポジウム
—第1回新生児研究会—巻頭言
九嶋 勝司
1
1東北大学
pp.93
発行日 1964年2月10日
Published Date 1964/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202971
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新生児は小児科に入院すれば一人前の入院料を必要とするが産科にいるかぎり病児でも入院料がいらない。これは新生児は母体の附帯的存在であるという概念に発していると思う。新生児がこのような不当な取扱いを受けている理由は保険側の無理解のみにあるとはいわれないようである。新生児は母体の側におけば自然に育つてゆくものであるという態度をとつてきたのは他ならぬ過去の産科医であつたのではあるまいか。小児科は正常児さえも病児のような扱かい方をする傾向があつたのに対し,産科では病児さえも正常児なみの取扱かいをすることがなかつたであろうか。それほどでなくとも,新生児は小さすぎて,診ても判りにくく,反応力も弱いから病像も大人のように明確ではないから,けつきよく見ても仕方がないのだという諦観があつたことは否定できまい。小児科方面で未熟児に関する研究が熱心に行なわれるようになつたのに刺激されてか,ここ2〜3年来,本邦産科学界においても新生児に関する関心が急速に高まつてきた。昨年8月,第1回新生児研究会を開催したところ,炎暑の候にもかかわらず,集るもの500余名という大盛会だつたことも,この辺の情勢を反映したものであろう。
新生児研究の最大の難関は検査物の採取困難とたとえ採取しても検査に充分な量が得られぬことにあつた。しかるに,微量定量法の進歩は次第に新生児から採取した試料でも測定が可能になりつつある。
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