Japanese
English
臨床 帝王切開
帝王切開術に続発したLower Nephron Nephtosis (Lucke)の1剖検例
An autopsy case of the lower nephron nNephrosis (Lucke) following the cesarean sSection
武田 正美
1
,
宮川 コウ
1
,
佐藤 淳一
2
,
宮川 慶吾
3
Masami Takeda
1
,
Jun-ichi Sato
2
,
Keigo Miyakawa
3
1岩手県立中央病院産婦人科
2岩手県立中央病院病院泌尿器科
3岩手医科大学病理学教室
pp.885-894
発行日 1963年11月10日
Published Date 1963/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202925
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まえがき
近年,産科領域においても抗生物質の普及,子宮収縮剤の改良,輸(血)液の合理化,麻酔法の進歩,さらに術式の改善工夫等により,帝王切開術(以下帝王と略記)の安全性がたかまり,その結果帝切症例数が欧米・本邦ともに増加の趨勢にある。しかし,帝切の絶対的な適応例は別としても,その安全性の向上という理由をもつて,たんに医師側の甘い状況判断あるいは,患者家族の意向に左右されて帝切を乱用してよいという段階には未だ達していまい。しかも帝切本来の目的である「異常分娩から母子を守る最終緊急の手段」としても乱用を厳に慎しむべきであるという反省が24),最近各方面から叫ばれつつあるにもかかわらず,その弊害・危険性を実証するに足る適例が意外にみあたらない現況である25)。もつとも,通常の帝切では,術者の技術と適応の決断,術前後の管理が周到におこなわれる限り,たとえ術後に発生した種々の合併症とても小規模に止どめ,また治癒せしめうるものである21)。しかしながら,生児には特別の異常がなく,母体にのみ急性腎不全症を惹起し,重篤な尿毒症を併発してしまい,臨床医の及びうる救急処置を傾けているうちに急死したという帝切合併例の報告は全くみあたらない。問題は安全性が高いはずの帝切に対して,不慮の合併症の軽重・多少ということだけではない。
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