連載 MY THERAPY in series・11
Intracranial irritationの治療
藤井 とし
1
1都立築地産院小児科
pp.492-493
発行日 1963年6月10日
Published Date 1963/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202832
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新生児を取り扱うに当つて,妊娠,分娩の異常で生まれた児に適切な治療を行ない,後遣症を残さないよう,死から救うことが大切な勤めと思う。新生児初期にみられる異常は,その大半が妊娠,分娩に関係した。即ち,外傷,無酸素症による変化で,脳および肺の変化が著明であり,剖検によつても主変化はこの両臓器に見られる。Collisは異常分娩,遷延分娩,急速分娩,臍帯脱出,母体の妊娠中毒症の際は常に脳の障害があると思わねばならないと述べている。このような場合に見られる症状は,中枢神経症状と,呼吸循環器の症状で,蒼白,チアノーゼ,無呼吸発作,頻数呼吸,無欲,筋緊張低下,四肢強剛,痙攣,搐搦,頭部後屈,泉門膨隆,眼球振盪,脳性啼泣,皮膚異常発赤,嘔吐などである。脳に起る変化として,頭蓋内出血,無酸素性の脳細胞の傷害,脳浮腫などが起ると考えられている。Craigは脳の出血と浮腫とは臨床上鑑別の困難なことから,これを一括してIntraCranial irritationと呼んでいる。私も出血と浮腫は詳細な観察と検査により鑑別しうることもあるが,診断の困難なことをしばしば経験する。出血の診断のもとに解剖した結果,脳には浮腫以外に変化の認められないことが意外に多い。そこで脳に変化を起す仮死とIntracra—nial irritationの治療を不十分な点が多いが述べさせていただく。
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