増刊号 2024年最新版 外科局所解剖全図—ランドマークの出し方と損傷回避法
Introduction
遠藤 格
1
1横浜市立大学消化器・腫瘍外科学
pp.2-3
発行日 2024年10月22日
Published Date 2024/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214678
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解剖学は時代に応じて進歩を遂げてきた.古くはエジプト・メソポタミアに起源をもつが,古代ギリシャ・ローマ時代には最古の解剖学書といわれるガレノスの所見がスタンダードとされた.ローマ教会の権威と結びついたため医学は長い間停滞したが,ルネッサンス期になるとヴェサリウスが『自分の目でみた所見をありのままに記述する』という信念のもとに新しい解剖学を打ち立てた.しかし,当時の外科治療はほぼ体表手術に限られていたため,内臓の形態・機能の知識は乏しかったと思われる.1846年にエーテル麻酔が開発されるようになると全身麻酔が可能となり,一気に体腔内へのアプローチが可能となった.これにより胃癌(Billroth),直腸癌(Miles),膵癌(Wipple)などの術式が開発された.
このように解剖学の進歩は外科学の進歩と二人三脚であった.それは現代でも続いている.一例を挙げれば,肝臓切除において右葉切除のみを施行するならばグリソン鞘や肝静脈の詳細な解剖学的知識は不要であり,個々の患者の解剖学的変位について術前に熟知する必要もない.肝機能や腫瘍の局在によって術式が個別化されるようになって,解剖学にニーズが生まれた.
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