健保講座 健康保険
保険診療の実際(その1)
三井 武
1,2
1日本医科大学
2東京都社会保険基金審査
pp.36-37
発行日 1963年1月10日
Published Date 1963/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202733
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保険診療の方針は一般に適正診療という言葉で表現されており,保険医療担当規則に基いて行なう診療である。ここにいう適正という意味は医学的,経済的,社会的にみて適正であるということを意味しているが,医学界における最近の日進月歩の著しい進歩のためにややもすれば学界における趨勢と実際に施行されている治療指針との間にいろいろのずれを生じ,医学の研究の正常な発展が阻害される恐れもあり,また直接患者に接している第一線の診療担当者としても,その治療にあたって多くの困難や疑問をもつことがある。しかしながらここでは,そういつた原則論は抜きにして実際問題として現在の保険診療は一応規格診療ということになつており,患者から直接差額徴収することはもちろんのこと,正常妊娠,正常分娩なども社会保険でいう疾病治療の範囲に属さないものとして保険の給付外であり,また人工妊娠中絶時の全身麻酔も患者が神経質であるとか,頚管拡張時の疼痛が激しいためなどの理由がない限り全般的にすべてを認めるという段階でなく,また抗生物質,副腎皮質ホルモン,副腎皮質刺激ホルモンおよび性腺刺激ホルモンは今回使用基準が大幅に改正されたとはいえ(昭和37年10月1日より実施),なお一応の規格はあるわけで実際に請求明細書作製にあたつて治療の基準,指針,疑義解釈に精通しているといないとでは非常に大きな差が生じてくる。
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