Japanese
English
日常診療メモ・ⅩⅢ--Memo on the clinical treatments in daily use (XIII)
鉗子術及び穿頭,砕頭術に関するメモ
Memo on forceps delivery, perforation and decapitation
清水 直太郎
1
Naotaro Shimizu
1
1九州大学温泉究研所産婦人科
pp.258-263
発行日 1961年3月10日
Published Date 1961/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202395
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鉗子術は帝王切開術(腹式),胎児縮小術,廻転—牽出術等と共に重要な急速遂娩術の1つであるが,近年その実地応用は帝王切開術の増加と逆に減少した感がある。これは鉗子術になる恐れがある場合に,その要約が満される以前に,即ち子宮口が殆ど全開大して破水し,児頭が適位にある状態になるのを待たずに,他の方法,就中母児にとって最近著しく安全になつた帝王切開術を選ぶのが1つの主な原因ではないかと思う。帝王切開術を行うには既に分娩が進行しすぎているものに,要約のととのうのを待つて鉗子術を行うというのが今日の状態である。従つて実地上鉗子術が最も多く行われるのは,比較的容易とされる頭位における出口鉗子術である。然しこの場合でもなお鉗子術では児の損傷,生後の発育障害等が問題視されているから,鉗子分娩が漸減するのは当然である。まして児頭がまだ骨盤入口を通過せず,鉗子適位にない状態で行う高位鉗子の如きは,今日では産科治療法としての実用価値はなく,斯る場合には寧ろ早急に帝王切開術を行うべきである。無痛乃至和痛分娩時に用いられる補助的出口鉗子分娩は,従来の所謂鉗子分娩と同一視することは差し控えたい。その児への影響は今日のところ問題視するほどのものではないようであるが,今後の長期観察結果に俟ちたい。要するに所謂鉗子術はその実用範囲を,大体児頭最大周囲が骨盤峽部乃至出口に達したものとするときに,今日その価値が認められると思う。
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