同人放談
台湾の開業医
橋爪 一男
1
1日大
pp.227-228
発行日 1960年2月10日
Published Date 1960/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202151
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台湾医学会に出席講演のため11月20日台湾に渡り,18日間滞在し台湾の各地を歴訪した。終戦前私の教えた台湾の学生が皆出世して立派な開業医として堂々門戸を張り,心からなる歓待をしてくれた事は,終生忘れ得ぬ喜びであつた。そしてそれ等の諸君と歓談している間に,台湾の開業医制度がどんなものかも凡そ見当がついた訳である。
開業医は多く市街の中心地の極めて繁華な所に診療所を構える。暑い国であるから11月の末と言うのに直射日光は焼けつくよううにあつい。蒋介石の威力により,よく舗装された道路のアスファルトはまさにとけん許りである。そして両側の歩道に当る所は個人の所有地で,長屋式の店舗状に竝んだ三階建の家屋の一階前面に当るが,之が雨のおちない私道,即ち歩道となる仕掛,間は2間か3間だが,奥が鰻の寝床のように深く,前の方は診療室,待合室となり,奥の方や,二階三階は住い(すまい)又は病室となる。このような訳で一見店舗状の間口の医院は肉屋や呉服屋や雑貨屋やその他の商店と入りまじつて竝列する。文字の国であるから○○医院と言つた墨痕淋離たる看板がかけてあるのですぐ判る。外観が店舗のようなのがわれわれには珍らしく感ぜられる。又医者自身が自分の家の事を店(みせ)と呼んでいるのであるが尚更ハッキリしている訳であろう。
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