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特集 産婦人科診療の今昔
産科学
新生児溶血性疾患
Hemolytic diseases of newborn infants
小川 猛洋
1
Takehiro Ogawa
1
1日本赤十字社中央病院産婦人科
pp.91-95
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202124
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Ⅰ.まえがき
本症は胎児赤芽細胞症,新生児重症黄疸,先天汎胎児水腫等の名称で呼ばれて来た疾患で,家族性重症黄疸ともいわれ,赤血球の破壊,有核赤血球の増加,貧血,肝臓および脾臓の強度腫大等を特徴とし,17世紀に初めて記載された。その本体に就いては以前は1.単に生理的黄疸の増悪したもの。2.母体の新陳代謝産物に依る胎児の中毒。3.(先天)梅毒性肝炎。4.敗血症,Winckel病,Buhl病。5.網状内上皮細胞組織の機能失調。 等とされ,生後急速に黄疸が発生増強し,無気力,昏睡,痙攣等を伴い,予後が著しく不良,多くは生後数日で死亡し,その治療法も不明であつた。然るにLandsteiner1)及びWiener (1940)に依るRh-Hr式血液型の発見,Levine2),Stetson (1939)の臨床実験以来,その病因が明らかに説明される様になつた。即ち母体が所謂Rh (—),胎児がRh (+)の場合,換言すれば母児がRh-Hr式血液型に就き不適合の場合に,母体が胎児のRh (+)血球に依り同種免疫されてその血行内に抗Rh抗体が生じ,之が妊娠中,又は分娩時,胎盤循環を通じ胎児に移行して,その血球を凝集乃至溶解する結果,こゝに一連の溶血性疾患が惹起される。之が即ち本症である。爾来その治療に対する研究も益々発展するとともに,原因となる抗体にも多数の種類がある事が明らかになつた。
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