Japanese
English
原著
婦人における所謂フイラリア症々状,特に乳腺炎様症状について
On the so-called filariosis-like symptom, particularly the mastitis-like symptom
森 一郎
1
,
横山 淳一
1
Ichiro Mori
1
1鹿児島大学医学部産婦人科教室
pp.305-308
発行日 1957年5月10日
Published Date 1957/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201545
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緒言
フイラリア症は熱帯および亜熱帯に広く分布する地方病で,わが国においても鹿児島から青森に至る各地でみられるが,とくに鹿児島は最浸淫地とされて多くの報告がある。なお産婦人科領域における本症については,教室の前田1),および末広2)によつて研究報告されているところで,とくに前田はその広汎な統計的観察から,本症は臨床的に女性では男性に比し感染し易く,その症状具有者も多く,その症状発現の誘因として,一般に過労や,気候の変化や,妊娠や,産褥や,月経等を重視し,なお本症によつて性周期が変化したり,さらに妊孕力すら亢進することを実験的にも証明している。われわれの,本症最浸淫地である奄美大島及び南西諸島における昭和29〜30年の本症観察成績も,第1および2表に示すように,ほぼ前田1)の成績に一致し,全く婦人においては症状具有者,仔虫保有者を問わず本症が多いことを識つた。
ところが本症々状の種類と発現頻度,年齢,誘因等の関係についてはなお不充分な点が多いため,われわれは本年奄美大島地方における調査で,その症状の著明な45例につきこれらの関係を詳細に検索した。なお本症は極めて多岐な症状を呈するし,症状の調査に当つては過去のものも問診を行わなくてはならないので,症状の表現には当地方でいわれる表現型式を採用した。
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