Japanese
English
原著
腟トリコモーナスの培養と治療とに関する実験的研究(その2)
Experimental studies on the culture and treatment of trichomonas vaginalis (Ⅱ Report)
上野 統一
1
Toichi UENO
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科教室
pp.219-227
発行日 1956年4月10日
Published Date 1956/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201347
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第2章 治療剤の硝子(管)内効果
腟トが病原的であることを1916年にHoehneが唱えて以来,本症の治療法として発表されたものは枚挙にいとまがない。それ等は物理的乃至物理化学的療法・化学藥品(消毒剤)による療法及び最近の抗生物質による療法の3種に大別され,これ等の単独又は併用によつて効果を挙げんとするものである。併し乍ら,治療法の多いことは適確な治療が無いことを意味すると云う言に違わず,本症に於ても確実な治療法は未だ知られて居ない。
従来本症の実験治療が進展しなかつた理由は次の2項を挙げ得ると思われる。すなわち,本原虫の無菌培養以前の培養方法では細菌との共棲培養である為に硝子内実験の成績判定が極めて困難であつたのがその1つである。硝子内の共存細菌を殺菌する藥品を用いると,たとえそれ自身は腟トには無影響であつても,生活必要条件が満足されぬ為に2次的に死滅するのである。他の1つの理由は実験感染動物が存在しなかつた為であるが,この点はSchnitzler等の発表以来マウスが比較的感受性の高いものであり,皮下・筋・腹腔等に膿瘍を作つて感染することが知られて解決したと思われる。
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