増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
婦人科編
I 婦人科感染症・類縁疾患
腟炎―細菌性腟症/トリコモナス腟炎/カンジダ腟炎
岩破 一博
1
1京都府立医科大学産婦人科学教室
pp.8-12
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103655
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疾患の概要
細菌性腟症
腟内の常在乳酸菌が減少し,嫌気性菌などの複数の雑菌が異常増殖した状態である.クラミジア感染は症状が出にくく,細菌性腟症が症状の1つとなり,診断のきっかけとなることがある.性感染症のスクリーニングとしても細菌性腟症が注目され,また細菌性腟症は流・早産,前期破水のリスクファクターであり,早産既往症例,子宮頸管長短縮が認められるような早産のハイリスク症例に対しては,細菌性腟症を治療することにより周産期予後を改善できるという考えが主流である.
トリコモナス腟炎
トリコモナス原虫(Trichonas vaginalis)が原因で,年齢層が幅広く,性交経験のない女性や幼児にも感染者がみられることから,性感染症以外の感染経路も考慮する必要があり,幼児虐待もあるので注意を要する.トリコモナス腟炎ではトリコモナスだけではなく,細菌性腟症関連細菌が増殖し,混合感染の形態をとることが多い.帯下の鏡検でトリコモナス原虫を確認できるのは約70%とされ,確認できない場合は,トリコモナス培地で培養する.
カンジダ腟炎
Candida albicansや最近増加・難治性化しているCandida glabrata,Candida tropicalisなどの増殖による真菌症である.その存在だけではカンジダ腟炎とはいえず,症状がなければ治療の必要がない.症状は,粥状,酒粕状,ヨーグルト状の白色帯下と外陰部搔痒感,灼熱感が特徴である.帯下の鏡検で分芽胞子や仮性菌糸体を検出し,かつ搔痒感,帯下増量などの症状を認めた場合にカンジダ症と診断する.
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