特集 婦人科領域のAndrogen
乳腺症,乳癌とandrogen
藤森 正雄
1,2
1東大
2三井厚生病院外科
pp.1093-1100
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201295
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I.乳腺症の本態
40歳から45歳頃の経閉期の婦人に次の如き特異な疾患がある。両側の乳房内に時を同じくして,或は相前後して小豆大から鴛卵大に至る様々の大きさの抵抗を触れる。この抵抗は腫瘤ではあるが,境界はむしろ明瞭でない場合の方が多く,従つていわゆる結節という感じは少い。腫瘤の表面は皮膚の上から触れると,やゝ不平ではあるが滑らかな顆粒で蔽われ,一般に正常の乳腺組織の硬さと大同小異の硬度をもつているが,この中に普通よりや工硬い硬結を触れることが特徴である。この硬さは,癌に特有な硬固という硬度ではなく,もちろんhöckrigという感じでもなく,患者が平常触れ慣れている自分の乳腺の硬さとはやゝ違つて,いくぶん硬いという程度に過ぎない。腫瘤は平手で触れると見逃すことが多いが,指の間に触れると把握できることが多い。このような腫瘤が一つでなく数個,しかも大小不同のものが多発することが特徴である。疼痛は必発現象でなく,また一般に軽く,月経との関係も一定しない。時にはまた乳頭から病的分泌を認めることがあり,分泌液は血性,乳様,漿液性,血様漿液性など様様である。
このような特異な局所症状を示す疾患は古くから注目されていたもので,その1型はすでに1828年CooPer, A.によつてはじめて報告されている。
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